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うつ病をめぐる最近の話題

うつ病と認知症の関係

馬場元新井平伊

Pharma Medica Vol.30 No.3, 53-57, 2012

はじめに
 認知症にうつ病が合併する症例やうつ病から認知症に移行する症例は日常臨床においてしばしば経験するものであり,多くの疫学的調査からもうつ病が認知症のリスクファクターであることが示されている1)。

KEY WORDS
●うつ病 ●認知症 ●アルツハイマー病 ●リスクファクター

はじめに(続き)

これまでは高齢者のうつ病,特に高齢発症のうつ病が認知症へ移行しやすいと考えられていたが,最近では若年発症のうつ病の既往も将来の認知症発症の危険性を高めることが報告されている2)3)。またうつ病から認知症への移行のメカニズムに関してもさまざまな報告や考察がなされている。高齢うつ病患者の脳で多くみられる無症候性の脳血管障害は,高齢で発症するうつ病の病因に関係するばかりでなく,認知症への移行にも深く関与すると考えられている。しかしこれは若年発症のうつ病と認知症との関連性を説明することができず,他のメカニズムの存在が示唆される。うつ病から認知症への移行の他の生物学的メカニズムとして,視床下部-下垂体-副腎系(Hypothalamic-Pituitary-Adrenalaxis;HPA-axis)の機能亢進による高コルチゾール血症や,脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor;BDNF)などの神経栄養因子の減少,アミロイドβ蛋白(Aβ)の異常などが考えられている(図1) 1)。

本稿ではうつ病と認知症の関係について,疫学的調査やそのメカニズムに関する報告を,一部われわれの研究も紹介しながらレビューする。

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