うつ病をめぐる最近の話題
うつ病と自殺;自殺防止の視点から
Pharma Medica Vol.30 No.3, 49-52, 2012
はじめに
日本での自殺者数は,政府刊行書の報告1)によると2010年は31,690人であり,1998年以降13年連続で年間自殺者数が3万人を超えている。性差は,男性が約7割を占める。年齢は中高年に多い特徴がある。警察庁の調べでは,自殺の動機として最も多くを占めるのは健康問題で,次いで経済問題,家庭問題が続く。そして健康問題の最も多くを占めるのがうつ病である2)。
KEY WORDS
●うつ病 ●自殺予防 ●自殺プロセス ●ゲートキーパー ●抗うつ薬
はじめに(続き)
精神医学的には,遺族への聞き取りを中心とする心理学的剖検という調査が1950年代から欧米を中心に行われ,自殺者の約90%が自殺時に精神科の診断がつく状態であったことが判明している(図1) 3)。
最多は気分障害で,大部分がうつ病である。次いで物質関連障害,統合失調症,パーソナリティ障害が続く。気分障害はうつ病と躁うつ病を含めた疾患分類であるが,躁うつ病のうつ病期や,躁とうつの混合状態にも自殺は多いことが知られている。物質関連障害とはアルコールや薬物の乱用・依存症のことだが,うつ病・うつ状態との合併が自殺の危険性を高めることが知られている4)。統合失調症ではうつ状態を呈することも多く,自殺の危険因子として,合併するうつ病・うつ状態があげられている5)。同様に,パーソナリティ障害でも,うつ病・うつ状態の併存が自殺の危険性を高める。このように一次診断が気分障害以外であっても,併存するうつ病・うつ状態が自殺の要因として存在する事実があり,うつ状態全般を自殺の危険因子として認識する必要がある。
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。