はじめに  まず,うつ病の「再発」について議論するにあたり,「再発(Recurrence)」と「再燃(Relapse)」との区別については言及すべきであろう。当時うつ病研究を中心に行っていた研究者らが提唱した概念1)によれば,Recurrenceとは症状がほぼ消失した状態,すなわち「寛解(Remission)」が持続し,「回復(Recovery)」に至ったにもかかわらず,新たなうつ病のエピソードが出現することを指す。それに対して「Relapse」とは,「寛解」の状態が長期に持続せず,再びうつ状態が認められる状態となることと定義された。以後,この概念は一定のコンセンサスを得たものとなっているが,しかし一般にはそのような概念は混乱を招きやすく,また継続治療や維持治療の期間については恣意的な面も否めない。そのため,本稿では狭義の「再発」と「再燃」を合わせた広義の再発,すなわちいったん症状が改善した後に再び症状が出現する状態として扱っていきたい。