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うつ病をめぐる最近の話題

現代型うつ病とは

坂元薫

Pharma Medica Vol.30 No.3, 15-18, 2012

はじめに
 近年,うつ病の多様化がしきりと論じられるようになった。そうしたなかで「新型うつ病」が話題に上ることも多いが,「新型うつ病」という精神医学用語はないことをはじめに確認しておきたい。現代の若い人たちがしばしば呈するうつ病を,マスメディアがこのように命名したものである。

KEY WORDS
●現代型うつ病 ●逃避型抑うつ ●非定型うつ病 ●ディスチミア親和型うつ病 ●治療

はじめに(続き)

 従来は,「うつ病」といえば,勤勉・実直・他者のための奉仕というメランコリー親和型的な倫理観に根差した典型的なうつ病を意味していたが,昨今の診療場面では,若い人を中心に,自責感に乏しく他責傾向が目立ち,抑制症状よりも回避症状を主体とする病態を呈するようなうつ病がみられるようになってきた。「逃避型抑うつ」,「非定型うつ病」,「ディスチミア親和型うつ病」などとしてわが国の臨床家が検討を重ねてきた。しかしこうしたいわゆる「現代型うつ病」の概念が混乱しているのも現状である。
 まず「現代型うつ病」が包含する病態(逃避型抑うつ,非定型うつ病,ディスチミア親和型うつ病)を概観し,その治療的対応についても述べていきたい。

Ⅰ.「現代型うつ病」の臨床的特徴

1.逃避型抑うつ

 広瀬によってわが国の職域でしばしばみられる病態として1977年に提唱されて以来,今日までその概念が醸成されてきた逃避型抑うつの臨床的特徴1)を筆者なりに理解するところを表にまとめてみた。

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