<< 一覧に戻る

虚血性脳卒中診療の現在;急性期診療からリハビリテーションまで

脳卒中後リハビリテーションの意義と現状

酒向正春

Pharma Medica Vol.30 No.2, 55-59, 2012

はじめに
 脳卒中後リハビリテーション(以下,リハビリ)の目的は,廃用症候群の予防,神経機能の回復,日常生活動作機能の回復・維持による全人的復権であり,社会参加,社会貢献を目指した人間回復である。2000年の回復期リハビリ医療制度発足までは,急性期治療という盲目的安静臥床による廃用症候群が頻発し,寝たきりによる褥瘡,深部静脈血栓症が当たり前の暗黒の時代を経験した1)-4)。発症後3ヵ月の脳卒中後遺症の大部分は一生涯残存し2),後遺症治療の遅れは機能回復や社会復帰の遅延や困難に直結する2)3)。後遺症軽症例では社会復帰,復職が可能となるが,中等症以上の後遺症をきたすと社会復帰や復職は容易でない。
 本稿では,急性期・回復期リハビリの現状,機能予後予測,機能回復のアプローチ,今後の展望について概説する。

KEY WORDS
●脳卒中 ●急性期リハビリ ●回復期リハビリ ●廃用症候群 ●人間回復

Ⅰ.脳卒中リハビリテーションの現状

1.急性期リハビリテーション

 急性期リハビリの解析では4),急性期脳卒中47,768例の入院時重症度は軽症69%,中等症19%,重症12%であり,軽症患者が多数を占める。発症後3日以内開始の超急性期リハビリ割合は脳梗塞52.6%,脳出血45.3%,くも膜下出血21.3%であり(図1A),4日以降28日以内開始の急性期リハビリに比べて機能予後が有意に良好であった。一方,リハビリ未施行は脳梗塞26.0%,脳出血25.1%,くも膜下出血49.0%を占め,改善されるべき喫緊の課題である。また,退院時modified Rankin Scale(mRS)が3~6である急性期機能予後不良例は脳梗塞41.2%,脳出血65.3%,くも膜下出血46.5%と高く,特に脳出血の機能予後が不良であった(図1B)。

 急性期脳梗塞36,700例の解析では4),重症度と機能予後,リハビリ開始時期に強い相関を認め,重症例以外では病型別,年代別,性別にリハビリ開始時期と機能予後に有意差を認めた。mRSが2以下の良好回復例は,60歳以下で80%,60歳代で70%,70歳代で59%,80歳代で39%,90歳代で20%と,加齢に応じて回復率が低下した。重症度が軽症,年齢が若年,性別が男性,リハビリ開始時期が3日以内で機能予後は有意に良好であった。
 急性期リハビリでは特に廃用症候群予防が重要である1)-3)。70歳以上の高齢者では1日ごとに廃用が進行し,2週間以上の安静臥床が回復困難な廃用を生じるため3)5),発症当日からの超急性期リハビリ,そして,早期離床が必要である6)7)。片麻痺に伴う非麻痺側筋力低下は歩行や日常生活動作(Activities of Daily Living;ADL)を困難とし,関節拘縮をきたした廃用症候群は麻痺以上のADLの低下因子である。廃用症候群の回復には少なくとも1ヵ月以上を要することから,廃用症候群をきたす急性期医療は数ヵ月の医療費の浪費である認識が必要である6)7)。

記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。

メールアドレス

パスワード

M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。

新規会員登録

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る