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虚血性脳卒中診療の現在;急性期診療からリハビリテーションまで

無症候性脳梗塞の治療方針

梁成勲永山正雄

Pharma Medica Vol.30 No.2, 39-43, 2012

はじめに
 CTやMRIの臨床導入以来,それまで診断名となることがほとんどなかった脳萎縮,無症候性脳梗塞,大脳白質病変,微小脳出血といった診断名が日常的に用いられるようになった。特に無症候性脳梗塞は,日常診療上,しばしば遭遇する所見であり,症候性脳梗塞および認知機能障害発症の高リスク群でもある。

KEY WORDS
●無症候性脳梗塞 ●高血圧症 ●無症候性頚動脈狭窄 ●脳梗塞 ●大脳白質病変

はじめに(続き)

 2009年11月,脳卒中関連5学会合同による脳卒中合同ガイドライン委員会(事務局:永山正雄)が「脳卒中治療ガイドライン2009」を公表・出版した1)。本稿では,筆者らが担当した無症候性脳梗塞,大脳白質病変に関するガイドラインおよびガイドライン公表後の新たなbest available evidenceを踏まえつつ,無症候性脳梗塞の治療に関する最新の考え方を紹介する。

Ⅰ.無症候性脳梗塞例における脳梗塞発症

 明らかな脳卒中の既往がない65歳以上の高齢者のMRIを追跡した大規模なコホート研究Cardiovascular Health Studyでは,平均4年の追跡で脳卒中発症のリスクを検討し,脳卒中の発症率は無症候性脳梗塞群で1.87%/年であり,無症候性脳梗塞がない群の0.95%/年よりも有意に高頻度であることを示した2)。したがって,無症候性脳梗塞は高齢者における脳卒中発症の独立した予知因子であるとされた。明らかな脳卒中の既往がない60歳以上の高齢者1,077例を対象としたThe Rotterdam Scan Studyでは,無症候性脳梗塞を有する例では2回目のMRIで新たな脳梗塞(無症候性脳梗塞81例,症候性12例)の出現率が,無症候性脳梗塞を欠く例と比べて有意に高い(オッズ比2.9)ことが示された3)。また同研究は平均4.2年の追跡で,脳卒中を発症するリスクは無症候性脳梗塞群で11.7%,無症候性脳梗塞がない群で2.3%と,無症候性脳梗塞群で比例ハザード比(他因子補正後)が3.9(95%CI:2.3~6.8)と高く,無症候性脳梗塞を有する例は脳卒中発症の高リスク群であると結論された。一方,脳卒中既往のない282例の外来患者(平均年齢66.9±8.4)を対象にしたわが国の研究では, 6 7 例(23.7%)に無症候性脳梗塞が認められ,脳梗塞発症は無症候性脳梗塞群で22.3人/1,000人,無症候性脳梗塞がない群で2.2/1,000人と無症候性脳梗塞群で有意に高かった4)。

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