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虚血性脳卒中診療の現在;急性期診療からリハビリテーションまで

ダビガトランの適応と留意点

棚橋紀夫

Pharma Medica Vol.30 No.2, 33-37, 2012

はじめに
 心房細動患者の心原性脳塞栓症または全身性塞栓症予防にワルファリンが数十年にわたり使用されてきたが,2011年より新規経口抗凝固薬(ダビガトラン)が加わった。ワルファリンは優れた抗凝固薬であるが,即効性に欠け,有効量と中毒量の幅が狭く,過剰であると出血傾向を,不十分であると血栓予防ができない,また食事制限(ビタミンKを多く含む緑色野菜,納豆など)が必要である,PT-INRなどの定期的な血液モニタリングの必要性,薬物相互作用,薬剤抵抗性などの問題点があった。

KEY WORDS
●タビガトラン ●抗凝固療法 ●心房細動 ●脳梗塞

はじめに(続き)

ダビガトランは直接的トロンビン阻害薬であり,薬効の発現・消失が早い,薬効が予測可能で血液凝固能のモニタリングの必要がない,食物との相互作用はなく,薬物との相互作用が少ないなどの利点を有する。非弁膜症性心房細動(non-valvular atrial fibrillation;NVAF)は,加齢とともに増加するが,近年NVAFにおける脳梗塞発症リスクに関与する因子が注目されCHADS2スコアが提唱されている1).Congestive heart failure, Hypertension,Age>75歳,Diabetes Mellitus,Stroke/TIAの頭文字をとって命名されたスコアで,前4つの項目には1点を,脳梗塞発症リスクの高いStroke/TIAの既往には2点を付与し合算して算出する。点数が高くなるほど脳梗塞発症のリスクが高くなる。
 本稿では2011年3月より使用されているダビガトランの適応と留意点について解説する。

Ⅰ.ダビガトランの大規模臨床試験

 RE-LY試験2)は,脳卒中の危険因子を1つ以上有するNVAF患者(18,113人)を対象にした。患者をダビガトラン150mg×2回/日群,ダビガトラン110mg×2回/日群,あるいはワルファリン群(INR 2.0~3.0, 日本人の70歳以上は2.0~2.6)に無作為に割り付け,ダビガトラン群とワルファリンは非盲検下で,ダビガトランの2用量は盲検下で2年間(中央値)投与し,脳卒中/全身性塞栓症(有効性の主要評価項目)の発症率,大出血(安全性の主要評価項目)の発現率などを検討した。脳卒中/全身性塞栓症の発症率は,ワルファリン群で1.71%/年であったのに対し,ダビガトラン150mg×2回/日群で1.11%/年,ダビガトラン110mg×2回/日群で1.54%/年であり,ダビガトランの両群ともにワルファリン群に対する非劣性(p<0.001)が,ダビガトラン150mg×2回/日群では非劣性のみならず優越性(p<0.001)も示された(図1)。

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