はじめに  総務省統計局の人口推計によると,2011年9月現在,わが国における65歳以上の高齢者人口は2,980万人,総人口に占める割合は23.3%となり,いわゆる超高齢社会(21%以上)に突入している。75歳以上の後期高齢者も1,480万人(同11.6%)に及び,さらに2055年には2,387万人(同26.5%)に達して前期高齢者の約2倍になると推計されている1)。  このように高齢者が急増するなか,70歳以上でbody mass index(BMI)≧25kg/㎡となる肥満高齢者の割合も増加してきている2)3)。詳しくは他稿に譲るが,若年から中年期における肥満(BMI≧25kg/㎡)は心血管疾患などによる死亡の危険因子として確立しており,内臓脂肪蓄積や肥満関連合併症を認めれば「肥満症」として医学的に減量が求められる2)4)。しかし高齢期における肥満については,生命予後に与える影響に関して若年~中年期とはやや異なる知見が多く,減量の有用性を示すエビデンスも不十分である(後述)。それゆえ,日本肥満学会が作成した「肥満症治療ガイドライン2006」および最近発表された「肥満症診断基準2011」においても,高齢者に関する記述はごく限られているのが現状である2)5)。  本稿では,高齢者肥満の診断や臨床的意義および治療について,その特徴や注意点などを最近の知見を交えて解説する。