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肥満をめぐる最近の話題

高度肥満患者の治療体系の組み方

齋木厚人白井厚治

Pharma Medica Vol.30 No.1, 37-40, 2012

はじめに
 肥満は糖尿病,脂質異常,高血圧,脂肪肝,睡眠時無呼吸症候群,腎障害やそれらを基盤にした動脈硬化性疾患,さらには関節障害や月経異常といった多彩な合併症を引き起こすが,肥満が高度になると合併症はさらに深刻になる。若いうちから冠動脈疾患や脳血管障害を発症し突然死に至ることもあり,また糖尿病の合併症も重篤になりやすい。医療の受け皿が乏しいため,合併症を有する高度肥満患者が難民化するという問題もある。わが国のBMI35kg/㎡以上の高度肥満患者は0.2~0.5%程度しかいないと推測され,現状では医療上あまり問題視されていない。しかし,重篤な多発合併症を有する生活習慣病患者のなかには,現在は肥満でなくても,過去に高度肥満であったケースは多く,実感として高度肥満患者の医療のニーズは決して少なくない。若いうちから減量治療に取り組めば,合併症は十分回避できるものであり,高度肥満を医療上の問題として真剣に取り組む時期に来ている。

KEY WORDS
●高度肥満 ●チーム医療 ●減量手術 ●ハイラムダ

はじめに(続き)

 一方で,高度肥満の治療体系の組み方は,中等度以下の肥満治療とは一線を画すものである。まずその多彩な合併症に対応できる各専門医が必要である。また高度肥満患者に対する内科治療は長期的には必ずしも有効でなく,近年では外科治療が主流になりつつあるため,外科医を含めた治療体系を作ると同時に,安全に外科治療の効果を発揮するために外科治療前後の内科医,栄養士,看護師の役割がより重要になる。さらに高度肥満患者は,心理社会的因子や行動様式に必ず何らかの問題を抱えており,そこを無視して減量治療をするとトラブルにもなりかねない。精神科医や臨床心理士の存在は欠かせず,関わるすべての医療者が高度肥満患者のメンタルサポートについて理解する必要がある。本稿では,高度肥満の内科・外科治療を行ううえで留意することやチーム体制の在り方について,特にメンタルサポートの重要性に触れながら概説する。

Ⅰ.高度肥満患者の心理的特徴

 高度肥満患者は,先天的な要因や発達過程の問題,あるいは現在の環境の要因が複雑に関与した結果「食べる」ことに依存的になっており,それにより精神のバランスを維持している。よって高度肥満症患者が生活習慣を改善するということは,他人が想像するほど簡単なことではない。まず高度肥満患者は太っている自分を好ましいとは当然思っておらず,繰り返す減量の失敗や,肥満に伴う数々の障害により成功体験も乏しいため,罪悪感が強く自尊心も低下していることが多く,またうつ病を合併する頻度も高い1)。表面上は明るく暢気を装ったり,あるいは太っていることを否認していたりしても(これは医療者側の視点では「病識がない」とされる),それは傷つかないための(無意識の)防御であったり,内面は非常に傷つきやすく自信を失っている場合が多いと理解する必要がある。患者本人の肥満や病気についての危険性を伝えても,否認して効果がないどころか,むしろ不安を助長して治療関係が悪化することもある。高度肥満患者ではロールシャッハテストで分類される「ハイラムダ」を高頻度で有することを小山らは報告している(図1)2)。

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