はじめに  肥満は糖尿病,脂質異常,高血圧,脂肪肝,睡眠時無呼吸症候群,腎障害やそれらを基盤にした動脈硬化性疾患,さらには関節障害や月経異常といった多彩な合併症を引き起こすが,肥満が高度になると合併症はさらに深刻になる。若いうちから冠動脈疾患や脳血管障害を発症し突然死に至ることもあり,また糖尿病の合併症も重篤になりやすい。医療の受け皿が乏しいため,合併症を有する高度肥満患者が難民化するという問題もある。わが国のBMI35kg/㎡以上の高度肥満患者は0.2~0.5%程度しかいないと推測され,現状では医療上あまり問題視されていない。しかし,重篤な多発合併症を有する生活習慣病患者のなかには,現在は肥満でなくても,過去に高度肥満であったケースは多く,実感として高度肥満患者の医療のニーズは決して少なくない。若いうちから減量治療に取り組めば,合併症は十分回避できるものであり,高度肥満を医療上の問題として真剣に取り組む時期に来ている。