<< 一覧に戻る

肥満をめぐる最近の話題

肥満症からみたメタボリックシンドロームの診断の考え方

西澤均下村伊一郎

Pharma Medica Vol.30 No.1, 23-26, 2012

はじめに
 肥満症とは,BMI 25kg/㎡以上かつ肥満に伴う健康障害を有するものもしくは内臓脂肪型肥満と2000年に日本肥満学会から定義され,その診断の意義は,肥満のなかから医療上減量の必要な人を抽出することである1)。これによって現在すでに健康障害をもった人だけでなく,内臓脂肪型肥満を肥満症とすることによって,近い将来合併症の発生が予測されるものを抽出することにもこの定義の重要性がある。

KEY WORDS
●メタボリックシンドローム ●肥満症 ●内臓脂肪蓄積 ●健診・保健指導

はじめに(続き)

肥満症の概念を源流として,2005年に8学会合同で策定されたわが国のメタボリックシンドロームの概念は,内臓脂肪蓄積を基盤とし,糖代謝異常,脂質代謝異常,血圧高値といった複数の代謝異常を合併する動脈硬化性心血管疾患の易発症状態といった1つの病態として捉えたものである(表) 2)。

すなわち,メタボリックシンドロームと診断する意義は,マルチプルリスクを有するもののなかから,内臓脂肪蓄積をベースとした集団を抽出し,内臓脂肪を減らすことでマルチプルリスクを包括的に改善することができる点にある。このメタボリックシンドロームの概念が,2008年にスタートされた特定健康診査・保健指導制度に取り入れられ,内臓脂肪蓄積の推定指標であるウエスト周囲長の測定が必須となっている3)。医療分野から健康政策の分野にもメタボリックシンドロームの概念が取り入れられ,動脈硬化性心血管疾患の予防医学の分野で多大な貢献をしている。その歴史的背景から当然,肥満症とメタボリックシンドロームの病態はoverlapしているが,肥満症の概念は,医療の現場で,個々の疾病側から肥満・内臓脂肪蓄積を評価し,その疾病が肥満・内臓脂肪蓄積に起因するかを評価するもの,一方メタボリックシンドロームは,健診・保健指導の現場などで,マルチプルリスク側から肥満・内臓脂肪蓄積を基盤とした病態を評価し保健指導につなげるものと考えれば理解しやすい。どちらも内臓脂肪を減量させ,リスク改善を目指すことを第一にする対策を基本とすることはもちろん共通している。

記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。

メールアドレス

パスワード

M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。

新規会員登録

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る