肥満をめぐる最近の話題
肥満症の危険因子発生における脂肪組織の役割
Pharma Medica Vol.30 No.1, 19-22, 2012
Ⅰ.肥満症の危険因子発生の上流-内臓脂肪型肥満
過栄養や運動不足などの生活習慣の欧米化とともに動脈硬化性疾患の罹患率は増加の一途を辿っており,国民の全死亡の約30%を占めている。このような状況のなか,わが国のみならず世界的に,内臓脂肪型肥満を中心として高血圧,糖代謝異常,脂質代謝異常などの危険因子が集積した病態をメタボリックシンドロームと定義し,動脈硬化性疾患の前段階として位置づけている。なかでも,内臓脂肪型肥満は上流に位置して,高血圧,糖代謝異常,脂質代謝異常などの危険因子を惹起すると考えられている(図1)。
KEY WORDS
●肥満 ●マクロファージ ●アディポサイトカイン ●異所性脂肪
Ⅰ.肥満症の危険因子発生の上流-内臓脂肪型肥満(続き)
メタボリックシンドロームの基盤病態として全身の軽度の慢性炎症が注目されており,肥満の脂肪組織そのものが炎症性変化をきたすことが明らかになってきた1)2)。脂肪組織は,アディポサイトカインと総称される生理活性物質を活発に産生・分泌する生体内で,最大の内分泌器官として多彩な生命現象に関与する。肥満の脂肪組織では,アディポサイトカイン産生調節の破綻,すなわち,TNFα(tumor necrosisfactor-α),IL-6(interleukin-6),MCP-1(monocyte chemoattractant protein-1)などに代表される炎症性アディポサイトカインの過剰産生とアディポネクチンに代表される抗炎症性アディポサイトカインの産生減少がもたらされ,メタボリックシンドロームの病態形成に中心的な役割を果たすと考えられている1)2)(図1)。

最近,種々の肥満動物や肥満症例の脂肪組織において,マクロファージを中心とする免疫担当細胞の浸潤が報告されており1)2),脂肪組織の炎症性変化における病態生理的意義が注目されている。
記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。
M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。