感染防止対策の最前線
医療従事者職業感染対策の現状と問題点
Pharma Medica Vol.29 No.12, 45-49, 2011
はじめに
「院内感染(病院感染)」の定義には,医療施設職員が業務中に感染症に罹患した場合が含まれている。職員が感染症に罹患することは職員の健康問題に留まらず,職員から患者への感染伝播のリスクにもつながっている。院内感染対策としても職業感染対策に取り組む必要があり,人事担当の事務職員に任せきりにせず,感染対策担当者が積極的に関与すべき領域である。
KEY WORDS
●血液媒介感染症 ●4種ウイルス感染症 ●結核 ●インフルエンザ
Ⅰ.職業感染と労働災害
職員が業務上罹患しうる感染症には,B型肝炎やHIVを代表とする血液媒介感染症,麻疹・水痘を代表とする小児期のウイルス感染症,結核を代表とする空気感染/飛沫感染症などがあげられる。感染対策としては曝露の防止と曝露後の対応の2つの観点から対応が必要である。
職業感染の予防対策のうち労災保険の給付対象とされているのは,血液媒介感染症であるB型肝炎の曝露後対策と,HIVの発症予防投薬である。また,結核は感染症予防法によって曝露者に対する定期検査と感染者に対する潜在性結核治療(発症予防投薬)が公費によってカバーされる。
Ⅱ.血液媒介感染対策
業務上注意すべき血液媒介感染症としては,遭遇頻度と罹患した場合の重大さを勘案するとB型肝炎ウイルス(Hepatitis B Virus;HBV),C型肝炎ウイルス(Hepatitis C Virus;HCV),HIVが主要な病原体である。これ以外にも梅毒トレポネーマ,HTLV-1,パルボB19ウイルス,出血熱ウイルスやマラリアなどでも血液を介した感染が知られている。
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。