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臓器移植をめぐる最近の話題;臓器移植法改正後の展開

血液型不適合肝移植の長期成績と最近の進歩

吉澤淳上本伸二

Pharma Medica Vol.29 No.11, 37-41, 2011

はじめに
 臓器移植において,血液型不適合移植は抗体関連型拒絶反応によるグラフト不全の危険があるため,一般的に禁忌とされてきた。一方,生体ドナーからの移植が発達してきたわが国では,臓器提供の申し出があったドナーの血液型が不適合とならざるを得ない可能性は十分にあり,血液型不適合の生体ドナーからの臓器移植が施行されてきた。腎臓移植においては,術前の血漿交換または二重濾過血漿分離交換法による抗体除去および脾臓摘出などの脱感作療法を実施し,グラフトの長期生着に成功し,現在では血液型不適合腎移植は生体腎移植の1つのオプションとなっている1)。

KEY WORDS
●ABO血液型不適合移植 ●肝移植 ●リツキシマブ

はじめに(続き)

 肝臓移植では,腎臓移植と同様,術前の血漿交換,脾臓摘出によって,抗ドナー血液型抗原に対する抗体価を下げ,術後はカルシニューリンインヒビター,ステロイド,代謝拮抗薬の3剤併用による免疫抑制が行われたが,初期の不適合肝移植の成績は不良であった。術後早期に起こる肝壊死,術後遠隔期に起こる肝内胆管病変,過免疫抑制状態による感染症が代表的な合併症であり,そのコントロールは困難であった。門脈持続注入療法や肝動脈持続注入療法などの肝局所持続注入療法の導入,さらに,リツキシマブの登場により治療成績は改善し,次第に血液型適合肝移植の成績に近づきつつある。
 本稿では,肝臓におけるABO血液型不適合移植に対する長期成績と治療の変遷と進歩について述べる。

Ⅰ.ABO血液型不適合肝移植における抗体関連型拒絶反応

 ABO血液型不適合肝移植における抗体関連型拒絶反応の特徴は,血管内皮上に発現している血液型抗原にレシピエントの抗ドナー血液型抗体が結合し,補体が活性化されることによって惹起される血管内皮炎が元となって生じる血管内凝固・血栓,血管攣縮による循環障害による移植臓器障害である。この反応は移植後10日以内に起こると考えられ,3週間以降には起こりにくいとされている。術直後の抗ドナー血液型抗体価は低値であることが多いが,1週間以内に再上昇に伴い肝機能障害が生じる症例については,抗体関連型拒絶反応を考慮するべきである。いったん急激な抗ドナー血液型抗体価のリバウンドが起これば,血漿交換などで抗体除去を行っても,抗体価は上昇し,抗体関連型拒絶反応を引き起こすため,術前術後より抗体産生を抑制するための十分な免疫抑制療法が必要とされる。
 このような抗体関連型拒絶反応により,循環障害が著しい場合は広範な移植肝壊死が認められ,グラフト肝不全に陥る危険が高い。一方,微小肝動脈のみ障害された場合は,当初は肝機能に異常がなくても,約1ヵ月後から胆管炎を繰り返すようになり,肝内胆管の数珠状の拡張と狭窄を認め,胆管炎を繰り返しながらグラフト機能不全に陥る。
 これらの血液型不適合肝移植における抗体関連型拒絶反応は,免疫システムの未発達な1歳未満の乳児では影響は受けず,5年生存率は,血液型適合肝移植と同等であった。一方,1~15歳の小児症例では,肝壊死や肝内胆管合併症を発症する症例があり,生存率は適合症例よりも低下し,さらに,成人症例では成績が不良であった(図1)。

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