はじめに  B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus;HBV)感染のインパクトは強く,世界人口の1/3(22億人)はHBVに感染したことがある。このうち,3億5千万人がキャリアであり,この75%が東南アジアおよび西太平洋地域に在住する。一方,わが国でのHBVキャリアは約130~150万人と推定されている。  HBVキャリアは,無症候性キャリア,慢性肝炎,肝硬変,肝発癌,急性増悪,再活性化などの多彩な病態を示す。このため,B型肝炎の診療では,その自然経過を理解し,病態を把握したうえで治療方針を立てる必要がある。本稿では,自然経過を基にした治療対象の選択,治療目標の設定,抗ウイルス療法の特徴とその使い分けなどについて述べる。