はじめに
C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus;HCV)は1989年に非A非B型肝炎の原因ウイルスとして同定された1)。現在,HCV感染症に対する主要な治療法はインターフェロンとリバビリンによる併用療法である。本年度中には新たにプロテアーゼ阻害薬が臨床導入され,より治癒率の高い治療が可能となると考えられている。HCVは発見されて以来ウイルス培養が困難であったため,その基礎研究は進まなかった。そのため,抗ウイルス薬やワクチンの開発が遅れてきたが,培養細胞で自律複製するサブゲノムレプリコンの開発や,HCVのエンベロープ蛋白をもったシュードタイプウイルスの開発により,HCVの複製増殖や初期感染に関する研究は大きく進歩した2)3)。さらに,劇症肝炎患者から単離されたJFH-1株のゲノムRNAを肝癌細胞由来のHuh-7細胞に導入することにより,感染性ウイルス粒子を培養細胞で作製する技術が2005年に確立された4)-6)。これは,レプリコンシステムやシュードタイプウイルスと異なりHCVの生活環(感染,翻訳,複製,ウイルス粒子形成・放出)をすべて再現可能な実験系であり,HCV研究を急速に加速させた。
全文記事
肝炎治療;最近の進歩
HCVの増殖機構
掲載誌
Pharma Medica
Vol.29 No.10 9-13,
2011
著者名
脇田隆字
記事体裁
特集
/
全文記事
疾患領域
消化器
/
感染症
/
癌
診療科目
消化器内科
媒体
Pharma Medica
Key Words
HCV
/
RNA
/
生活環
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。