アルツハイマー病の新たな展開
Aβ凝集の分子機構と治療薬開発
Pharma Medica Vol.28 No.7, 51-54, 2010
「はじめに」アルツハイマー病(AD)の病理学的特徴は, 老人斑, 神経原線維性変化, 神経細胞の消失であり, なかでも老人斑の主要構成成分であるアミロイドβ蛋白(Aβ)の凝集こそが, ADの発症機序に大きく関与すると考えられている(アミロイドカスケード仮説)1). Aβの神経毒性は, モノマーからオリゴマー, そして, より多量体に凝集することにより, 神経細胞毒性を獲得する. よって, この凝集過程を抑制することは重要な治療ターゲットとなり得る. 本稿ではAβ凝集の分子機構とその抑制薬開発の現状について概説する. 「I. Aβ凝集」Aβが凝集していく過程では, 無構造のAβモノマーからβ-シートへの構造変換を起こし, 続いて重合核が形成され, 幅約5nmのプロトファイブリル, さらには幅約10nmのファイブリルが形成される(図1)2)3). Aβオリゴマーは, そのサイズによってダイマーやトリマーなどのlow-n(低分子)オリゴマー, 12量体であるAβ-derived diffusible ligand(ADDL)やAβ*56, あるいは球状のamylospheroidが報告されている3)-6).
記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。
M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。