世界的な高齢化の進展に伴い,認知症患者は急速に増加している。特に超高齢社会である本邦において,認知症有病率および介護負担の観点からきわめて重大な課題を抱えており,認知症の予防において早急の対策が求められている。
糖尿病は,インスリンの分泌または作用の異常によって慢性的な高血糖を呈する代謝性疾患であり,世界の糖尿病患者数は年々増加し,社会的・経済的影響もきわめて大きい疾患である。糖尿病は認知症の重大なリスク因子であると結論付けている報告は多く1),今では既知の事実となっている。15の観察研究を対象とした最新のメタ解析では,糖尿病患者は健常者と比較して平均59%高い認知症リスク[リスク比(risk ratio:RR)=1.59,95%信頼区間(confidence interval:CI)1.40-1.80]を有し,認知症発症リスクの上昇は診断後5年以内からみられると報告された2)。さらに,糖尿病はアルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)発症の重大なリスク因子であるとも考えられており1),2型糖尿病はADの発症リスクを,約1.46~1.57倍上昇させると報告されている。また,糖尿病は血管性認知症発症のリスク因子でもあり,Noguchi-Shinoharaらの報告では,糖尿病の有無による血管性認知症のオッズ比は2であった1)。