本稿では,「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)(以下,ガイドライン第3版)」1)に記される薬物療法の要点を踏まえて,認知症の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)のうち「アジテーション」および「幻覚・妄想」について概説する。アジテーションはアルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)患者の約半数に出現し,症候の基準も近年再定義された。また,抗精神病薬であるブレクスピプラゾールは「アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感,易刺激性,興奮に起因する,過活動又は攻撃的言動」について適応追加の承認を取得しており,この国内臨床試験結果についても触れる。幻覚・妄想についてはレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)での出現頻度が高いことが知られ,この適切なマネジメントや鑑別診断の重要性について触れる。BPSDのマネジメントは,症例の個別性への十分な配慮を前提としたガイドラインの適正使用が重要である。