アミロイド陽電子放出断層撮影(positron emission tomography:PET)は,生体におけるアミロイドβ(amyloid β:Aβ)プラーク(老人斑)を非侵襲的に可視化する診断技術である。現在,アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)の最早期の病態を検出することが可能なバイオマーカーとして,ADの病態研究や疾患修飾薬の治験に広く使われている。本邦では,アミロイドPET診断薬の合成装置が薬事承認され,診断薬としての製造販売(デリバリ)も開始されたが,保険収載は長らく見送られてきた。
ADの病態を修飾して症状の進行を抑制する抗Aβ抗体薬であるレカネマブ1)が2023年に承認され,治療対象者を選択するためのアミロイドPET検査が保険収載され,診療実装された。さらに同様の抗Aβ抗体薬であるドナネマブ2)が2024年に承認され,投与開始後の脳内Aβプラークの除去確認にもアミロイドPET検査が使用されることになった。
認知症診療におけるアミロイドPET検査の適正使用を促すために,日本核医学会などの7学会による「アミロイドPETイメージング剤の適正使用ガイドライン(以下,ガイドライン)」3)が公表されている。本稿執筆時の最新版は改訂第3版(2023年)であるが,間もなく改訂第4版が公表される見込みである。
本稿ではこのガイドラインの概要を紹介するとともに,実臨床における課題について述べる。

