アンドロゲン除去療法(androgen deprivation therapy:ADT)は,進行性・転移性前立腺癌に対する標準治療であり,アンドロゲンの産生を抑制することで前立腺癌の成長・進展を抑える1)。ADTは,LH-RH(luteinizing hormone-releasing hormone)アゴニスト,またはGn-RH(gonadotropin-releasing hormone)アンタゴニストを中心に用い,抗アンドロゲン薬の併用も行われる。
ADTは前立腺癌の進行を抑制する一方で,全身的な代謝や内分泌機能に大きな影響をおよぼし,その結果として加齢男性性腺機能低下症(late-onset hypogonadism:LOH)症候群を引き起こす可能性がある(図1)2)‒4)。LOH症候群は,患者のQOL(quality of life)を著しく低下させる要因となり得る。長期にわたるADTは,代謝疾患や骨粗鬆症,筋力低下など多岐にわたる健康上の問題を引き起こす可能性がある2)3)。本稿では,ADTが引き起こすLOH症候群の病態とその対策について詳述する。