癌領域では,個々の患者の遺伝子を解析し,遺伝学的背景から治療薬を選択するprecision medicine(精密医療)がめざましい発展を遂げている。癌ゲノム医療は肺癌や乳癌などが先行していたが,2020年12月,BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)に対して,ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬のオラパリブが保険収載され,前立腺癌においてもprecision medicineが行われる時代となった。今回は,ゲノム外来を担当する東京慈恵会医科大学葛飾医療センター泌尿器科の田代康次郎先生に,前立腺癌におけるゲノム医療の現状と東京慈恵会医科大学泌尿器科の実際の取り組みについてお話を伺った。