新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease-2019:COVID-19)がパンデミックを引き起こしてから,約3年半が経過した.2023年6月現在,本疾患はエンデミック(地域流行)に近づいてはいるものの,依然として,公衆衛生学的に感染・超過死亡の拡大も含め,予断を許さない状態となっている1,2)

世界各地に拡散した新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus type 2:SARS-CoV-2)は,プロトタイプの武漢株を始祖ウイルスとした数多くの変異型(variant)ならびに亜変異型(subvariant)が2020年以降,出現し続けている3).この進化のプロセスで,当該ウイルスの主要抗原であるS(spike)蛋白のアミノ酸置換は,特にウイルス受容体(angiotensin converting enzyme 2 receptor:ACE-2R)との結合部位と推定されるレセプター結合領域(receptor binding domain:RBD)を中心に生じている3).また,2022年以降,世界各国で主流行型となっているオミクロン変異型(omicron variant)は,さらにその派生型である亜変異型を数多く生み出し,世界各国で本疾患流行の主流となっている1-4).このような背景から,本稿においては,オミクロン変異型・亜変異型を中心とした当該ウイルスS蛋白の分子進化を中心とした最新知見について概説する.