院内感染症による死亡リスクは自殺より高く,交通事故死の約100分の1であることが知られている1).また,高齢者が入所する高齢者介護施設においても,院内感染と同様に,施設内集団感染の多発が社会的・医学的な問題になっている2).このような背景から,わが国においても厚生労働省ならびに日本感染症学会などが,各現場で院内・施設内感染症に対し,予防・対応が可能なマニュアルを作成している3-5)
いうまでもなく,院内・施設内感染症に関与する病原体は数多く存在する.そのなかでも,インフルエンザウイルスやRSウイルスをはじめとする呼吸器ウイルスは,院内・施設内感染事例の主要原因となっていることが示唆されている6-8)
本稿においては,自験例も含め,院内・施設内感染症に関与する呼吸器ウイルスに関する概要を述べる.