ピコ秒(pico second;PS)レーザーは,超短時間のパルス幅(10−12秒=1ピコ秒)でエネルギーを放出する機器で,従来のレーザー治療技術を飛躍的に進化させている.その歴史は,1960年代のルビーレーザーの発明に遡る.1980年代には,ナノ秒(10−9秒)レーザーが登場し,皮膚科領域では太田母斑などの治療におもに利用されるようになった.これにより,色素性病変やタトゥー除去が可能になったが,周囲組織への熱拡散による色素沈着や瘢痕形成が課題として残った.とくにタトゥー除去では,色素沈着や瘢痕形成のリスクが高く,治療効果も限定的であった.また,アジア人の表在性色素性病変,とくに肝斑の治療においては,周囲組織への熱の影響により術後の炎症後色素沈着が問題となった.