マイクロバイオーム研究は,古典的には微生物を分離培養することで種類や働きを解析してきたが,2000年代以降に次世代シーケンサーなどの遺伝子解析技術が進歩したことにより急速に発展した.近年では,これまで培養できなかった微生物が新たに発見されたり,遺伝子情報や機能,宿主との関係が明らかにされたりしている.ヒトにもマイクロバイオームが定着しており,ヒトを構成する細胞の数が約37兆個であるのに対して,ヒトに共生する細菌は約100兆個であるとされ,圧倒的な数である.これらのほとんどは腸内に存在し,細菌が産生する短鎖脂肪酸などの物質が腸内環境を整えるだけでなく,血液や神経を介して脳や肌を含む全身状態とも密接に相互作用をしていることもわかってきている1)