アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)とかゆみの研究は飛躍的に進み,明らかにされたかゆみのメカニズムをターゲットとした治療は,すでに臨床現場で広く使われるようになっている.一方,近年,皮膚マイクロバイオームと疾患の研究も次世代シーケンサーの普及により大きく前進し,皮膚科領域では黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の皮膚表面の定着はADの病態だけでなく発症そのものに寄与している可能性が明らかとなり注目されている.また,皮膚マイクロバイオームとかゆみを直接つなぐメカニズムとして最近,S.aureusの産生するプロテアーゼが皮膚の末梢神経の受容体を介してかゆみを引き起こすことも報告され,皮膚マイクロバイオームの乱れが皮膚のかゆみを惹起するメカニズムの詳細が明らかになりつつある.本稿では,皮膚マイクロバイオームの乱れとADのかかわりから,S.aureusがどのような機序でADの病態に関与しているのか,そしてS.aureus由来プロテアーゼとかゆみの関連の研究までをまとめて紹介する.