顔面の黒っぽい扁平病変の鑑別において,最大の問題は日光黒子(老人性色素斑)とメラノーマ(悪性黒子)との鑑別である.シミの治療で美容的にレーザー治療を受けたが再発したという症例の何割かはメラノーマである.さらに,臨床像とダーモスコピー所見からメラノーマ(in-situ)を疑うものの,生検では異型メラノサイトがわずかであると,単純黒子あるいは日光黒子と診断されてしまう症例もある.しかしながら,とくに顔面の早期のメラノーマの鑑別にダーモスコピーは有用である.海外では診断困難例ではしばしば反射型共焦点顕微鏡(re-scan confocal microscope;RCM)による診断が行われるが,わが国ではRCM検査は保険適用がなく機器も高価であり一般的ではない.
本稿ではこのような状況を踏まえ,私たち臨床医が日常診療で顔面の黒っぽい扁平病変とメラノーマを鑑別するのに必要なダーモスコピーの知識,その他鑑別を要する色素性日光角化症,表在型基底細胞癌,扁平苔癬様角化症,色素性母斑,青色母斑,および血管腫などの所見について,臨床像とダーモスコピー像を対比しながら解説を行う.