転移・再発を来したHER2陽性乳癌に対しては,トラスツズマブとドセタキセルの併用療法にペルツズマブを追加すると無増悪生存期間も全生存期間もハザード比(HR)0.68と延長することがCLEOPATRA試験で示され¹⁾,ペルツズマブが実臨床に導入されて久しい。術後補助療法においても化学療法とトラスツズマブの併用にペルツズマブを追加したAPHINITY試験において,無浸潤癌生存期間(IDFS)のHRを0.81と改善し²⁾ 適応拡大された。

トラスツズマブは,再発・転移を来したHER2乳癌に対して化学療法に追加すると,無増悪生存期間はHR0.51,全生存期間もHR0.80と延長させ³⁾,術後補助療法では無病生存期間をHR0.48,全生存期間をHR0.67と大きく改善した⁴⁾。これを見るとトラスツズマブの効果は再発と術後であまり差がないことがわかる。したがって,ペルツズマブの術後補助療法での効果も再発後と同様に大きいものと期待された。ところが,ペルツズマブは術後に用いた場合は,無浸潤癌生存期間のHRが0.81と再発後のCLEOPATRAの結果と比べると見劣りする。しかも,もともとトラスツズマブで予後が改善された集団を対象としているので,絶対的な追加効果は小さい。


●本企画「誌上ディベート」は,ディベートテーマに対してあえて一方の見地に立った場合の議論です。問題点をクローズアップすることを目的とし,必ずしも論者自身の確定した意見ではありません。また,特定の薬剤の誹謗をするものではありません。


・論点整理/南博信

「すべきである」とする立場から/下井辰徳

「不要である」とする立場から/木澤莉香/尾崎由記範