1983年に腫瘍が分泌する血管透過性亢進因子(vascular permeability factor;VPF)が単離され1),その後1989年に血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)が同定されたが2),両者は同一の蛋白質であることがわかり,以後VEGFと呼ばれるようになった。VEGFは血管内皮細胞に特異的に作用する増殖促進と血管透過性亢進の2つの性質をもつ増殖因子である。VEGFファミリーと呼ばれる一連の増殖因子には,異なる遺伝子にコードされる5つのアイソフォームVEGF-A,VEGF-B,VEGF-C,VEGF-D,VEGF-Eとplacental growth factor(PLGF)-1およびPLGF-2の7種類があり,さらにVEGF-Aおよび-Bにはスプライシングの違いによるサブタイプが存在する。これらはチロシンキナーゼ活性を有する受容体(TKR)との結合を介して,血管新生,脈管形成やリンパ管形成に関与する。VEGF-Aは特異的受容体としてVEGFR-1とVEGFR-2と結合し,血管新生に作用する。一方,VEGF-Cは受容体として主にVEGFR-3を利用し,主にリンパ管新生に関与する。