味覚障害は抗癌薬を施行している患者の20-70%で認められ,特にタキサン系薬剤で顕著であることが知られています1)
人は舌にある味蕾という器官で刺激を受けて,神経を通して脳に伝えることで味を感じています2)。そのため,抗癌薬によって味蕾,神経のいずれかが障害を受けると味覚障害として現れます。味蕾はターンオーバーが約10日と早いため抗癌薬の影響を受けやすく,またタキサン系薬剤では投与終了後も味覚障害が続くことが多いことから,神経障害の面も併せもつと考えられます。
味の種類には塩味,酸味,甘味,苦味があり,抗癌薬治療を受けた乳癌,婦人科癌患者の味覚障害について調査したコホート研究では,塩味は最も感じにくくなり,16.3%の患者で塩分摂取が増えたと自覚しています3)。この研究では約半数の患者がタキサン系薬剤を含む抗癌薬治療を受けており,フルオロウラシル+エピルビシン+シクロホスファミド(FEC)療法とFEC/ドセタキセル療法を受けた患者を比較すると,後者の方がすべての味,特に塩味の障害が強いことも示されています。タキサン系薬剤での治療は塩味を感じにくくなっている可能性が高いことがわかります。