「はじめに」この数十年間に乳癌手術の低侵襲化が進み,乳房では乳房切除から乳房温存手術(BCS)へ,そして腋窩リンパ節領域では,腋窩リンパ節郭清(ALND)からセンチネルリンパ節(SLN)生検(SNB)へと進化した。SLN生検は安全かつ容易な手技で,ALNDと比較して有意に少ない後遺症発生率が大きなメリットと言える。その高い陰性的中率(negative predictive value)により,SLN転移陰性患者においてはALNDを問題なく省略することができる。一方で,SLN転移陽性の場合には,ALNDが標準治療であると最近までは考えられていた。しかしながら,SLN転移陽性例の約半数はSLN以外のリンパ節(非SLN)に転移を有していない。それらの症例ではALNDが不要である可能性が示唆される。今回,SLN1個転移陽性の患者に対してALNDは不要であるという立場で,最近の報告あるいはガイドラインを解説する。

●本企画「誌上ディベート」は,ディベートテーマに対してあえて一方の見地に立った場合の議論です。問題点をクローズアップすることを目的とし,必ずしも論者自身の確定した意見ではありません。

論点整理/南博信
「施行すべきである」とする立場から/武井寛幸
・「施行すべきでない」とする立場から/津川浩一郎