レンバチニブはVEGFR,FGFR,RET,c-KIT,PDGFRβを阻害する受容体チロシンキナーゼ阻害剤で,進行甲状腺癌に対する第Ⅲ相試験(SELECT試験)において,無増悪生存期間を18.3ヵ月と有意に延長し,2015年に承認された。当院で試験に参加した症例は蛋白尿,高血圧,疲労,食欲低下などの有害事象のため休薬,減量を繰り返したが,それでも高度の進行性胸膜転移にかかわらず2年近くコントロール可能であり,レンバチニブは進行性の転移性甲状腺分化癌に対して有効と考えられた。
「はじめに」今まで,分化型甲状腺癌に対する有効な全身治療はラジオアイソトープ(I131)しかなかった。しかし,最近種々の分子標的薬の有効性が明らかになり,そのなかでもレンバチニブは優れた有効性と安全性を示している。レンバチニブについて簡単に説明するとともに,当科で経験した臨床試験症例を提示する。