Doctor Interview
目の前の誰ひとり取りこぼさない個別化医療を目指して
掲載誌
精神科臨床 Legato
Vol.10 No.2 58-61,
2024
著者名
古郡 規雄
記事体裁
抄録
/
連載
疾患領域
精神疾患
診療科目
心療内科
/
精神科
媒体
精神科臨床 Legato
私が弘前大学医学部を卒業した当時は,今のような初期研修医制度がなく,医学部6年生の時点で入局先を決める必要がありました。その頃,すでに人工知能(AI)の出現を予見していた私は,「AIに取って代わられない診療科は何だろう」という視点で精神科を選びました。
というのも,医師国家試験の勉強をするなかで,こういう症状があればこういう疾患が鑑別にあがり,こうした検査をすれば病名がここまで絞れ,治療の選択肢がわかるという一連の流れが,自分の頭の中で組み立てられるようになっており,これならコンピュータでもできるだろうと思ったのです。実際にはそんな単純なものではありませんし,生成AI隆盛の現代においても,まだ取って代わられてはいないわけですが,当時はAIの手がなかなか及ばない診療科として精神科に魅力を感じました。
入局後すぐに大学院に進学しましたが,特に研究者になりたいという高い志があったわけではありません。募集があり友人も進学するというので,とりあえず入ったというのが正直なところです。当時,弘前大学にはてんかんや児童思春期,精神病理,臨床薬理学などさまざまなグループがあり,一日体験ですべてを回って,治療に直結すると感じた臨床薬理学グループを選びました。私が医師になったのは,病気を解明するためではなく,患者さんを良くするためだという思いがあり,まずは薬物治療のスキルを向上させることを第一に考えての選択でした。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。