アセトアミノフェンは有害事象リスクが低く安全性が高い消炎鎮痛薬であり,妊婦における疼痛および発熱管理でも投与可能な消炎鎮痛薬として臨床で使用されています。しかし,妊娠中のアセトアミノフェンの胎内曝露は胎児の神経発達に影響を及ぼし,注意欠如・多動症(attention deficit hyperactivity disorder:ADHD)や自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder:ASD)と関連する可能性が複数の研究で示されており,国際的なコンセンサス・ステートメントでも妊娠中は医学的に適応がある場合を除き,アセトアミノフェンの使用を見合わせることが推奨されています1)

妊娠中の薬剤曝露による胎児のリスク評価については倫理面から介入試験が難しく,その評価方法は観察研究に限定されます。しかし,妊娠中のアセトアミノフェン使用とADHDやASDとの関連性に関する先行研究は,多くが妊婦の自己申告によるものです。また,観察研究では未計測の交絡因子として,両親の健康状態や神経発達症の遺伝,妊娠中に使用したほかの薬剤などの可能性を除外できません。

今回取り上げる論文は,スウェーデンの約250万人の小児を対象に,妊娠中のアセトアミノフェンの使用と児の神経発達症(自閉症,ADHD,知的障害)のリスクについて,同胞解析などのユニークなアプローチを用いて検討したものです2)