従来,精神科救急は,精神疾患の急激な増悪や発症による危機的状況に対する即時の医療対応を中心に考えられてきた。この狭義の精神科救急は,「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」(以下,「にも包括」)の理念において,その意義の拡大を求められている。「にも包括」における精神科救急は,精神障害者や精神保健(メンタルヘルス)上の課題を抱えた者等および地域住民の地域生活を支えるための重要な基盤の1つであり,入院医療の提供のほか,同システムの重層的な連携による支援体制のなかでの対応,受診前相談や入院外医療により必ずしも入院による治療を要さない場合も念頭に置きつつ,都道府県等が精神科病院等と連携しながら必要な体制整備に取り組むことが重要であるとされている1)