1905年にアンリ・ド・レニエ(1864~1936年)が発表した『生きている過去』1)には,没落貴族の青年ジャン・ド・フラノワが,統合失調症的な精神変調を来して最後は自殺するまでの過程が描かれている。
ジャンは,パリ近郊ヴァンセンヌにある古い館で暮らす29歳の「体質が虚弱」な青年だが,「背が高く,ほっそりとしたジャンは,蒼白い顔をし,手も細かった」と,細長型の体格をしていた。
また,6歳のときに母親を亡くしてから専制的な父親と二人暮らしをしていた彼の性格については,「口数は少なく,控え目で内気」「彼を他人と異質な人間にしてしまった神経過敏や人嫌いな性格」「もともとこんな風に内攻的で,内にものを秘めかくすたち」など,いわゆる分裂気質的な性格に描かれている。