うつ病に対する抗うつ薬治療の効果については,ベースラインの重症度によって大きな違いがあることが知られてきました。2010年にFournierらが報告した抗うつ薬とプラセボの症状改善効果を比較するメタ解析では,重症のうつ病では抗うつ薬がプラセボよりも症状を改善する一方で,軽症~中等症のうつ病では明らかな差を認めないことが報告されています1)。さらに同解析ではプラセボ群でもうつ症状の改善を認めたため,軽症~中等症のうつ病に対して抗うつ薬とほぼ同等の治療効果をもたらすプラセボ反応に注目が集まりました。しかし,抗うつ薬を服用中の患者群で得られる症状改善効果のなかから,プラセボ反応に起因する効果のみを抽出して評価することは困難です。また,抗うつ薬の効果は,ベースラインの重症度などの治療効果に関連する要因に基づき,患者全体で均一ではないでしょう。特定のサブグループにおいてのみ大きな効果が得られ,その効果がならされて全体集団の効果として現れているのでしょうか?
今回取り上げるStoneらの報告は,うつ病の抗うつ薬単剤療法に関する無作為化プラセボ対照試験(randomized controlled trial:RCT)のうち,1979~2016年に米国食品医薬品局(FDA)に提出されたRCTの個別被験者データ(individual participants data:IPD)を混合モデルで解析し,被験者レベルの反応分布について明らかにするものです2)。