血友病最前線
【基礎】血友病遺伝子治療
掲載誌
Frontiers in Haemophilia
Vol.8 No.1 14-18,
2021
著者名
大森 司
記事体裁
抄録
疾患領域
血液
診療科目
血液内科
媒体
Frontiers in Haemophilia
血友病は,血液凝固第VIII因子(FVIII)または第IX因子(FIX)の産生・機能低下による出血性疾患である.FVIIIの異常が血友病A,第IX因子の異常が血友病Bであり,男児10,000人に1人の割合で発症し,国内の患者数は約6,000名である.血友病患者,とくに重症例が無治療の場合には,脳出血などの致死的な出血を引き起こすだけでなく,くり返す関節内出血による関節の変形が生活の質(QOL)を著しく阻害する.そのため,現在の血友病治療は関節内出血を予防するための定期的な凝固因子製剤の投与が一般的である.しかし,凝固因子の半減期はきわめて短いため,頻回の静脈投与が必要である.生涯続く治療の必要性は患者・家族の苦痛となり,遺伝性疾患という側面も,血友病患者の就労率の低さや未婚率の高さにもつながっている.そのため,血友病患者に対する治療は“止血”という観点から,“日常を取り戻す”という目的が達成できることが望まれている.その1つの候補が遺伝子治療である.遺伝子治療は1回の投与で長期にわたり,治療域の凝固因子が持続するため,治療薬の静脈投与の必要性がなくなり,患者のQOLの劇的な改善が見込まれる.本稿では,血友病に対する遺伝子治療の概要,および臨床試験の成功例を中心に概説する.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。