少子高齢化社会を迎えるわが国では,高齢心房細動患者の増加は必至である。抗凝固療法は心原性脳塞栓症を予防する最も有効な手段の1つであるが,同時に出血リスクも孕んだ治療である。特に高齢者は心房細動のほかにも複数の疾患を合併していることが多く,それに伴うポリファーマシーの問題,薬物相互作用の問題に加え,服薬アドヒアランスの問題や筋力低下に伴う廃用・転倒の問題など,有害事象発生のリスクが高い。

第Ⅲ相臨床試験のメタ解析の結果から,75歳以上の後期高齢者においても直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)は従来のビタミンK拮抗薬であるワルファリンと比較して優れた血栓塞栓症の予防効果をもち,頭蓋内出血リスクを低下させることが示されている1)。しかしながら,75歳以上といっても自立している患者から介助が必要な患者,寝たきりの患者まで,その日常生活自立度はさまざまである。また,75歳頃を変曲点としてフレイルや認知症の有病率・転倒の頻度は急速に増加するため,75~79歳,80~84歳,85歳以上の患者では抗凝固療法に対する反応性が異なる可能性がある。今回われわれは,J-ELD AF Registry2)(75歳以上の日本人心房細動患者におけるアピキサバンの有効性および安全性を検討した多施設前向き観察研究)のデータを用いて,on-label doseのアピキサバンを投与された患者の臨床転帰に対する年齢の影響を調査した3)