近年あらゆる診療領域において高齢者,特にフレイルや要介護状態にある高齢者に対する医療のあり方が注目されている。フレイルとは要介護状態の前段階でかつ疾患や加齢に伴う脆弱性が顕在化している状態であり,歩行速度や筋力低下がみられ,疲れやすく,痩せており,あまり活動しないなど,生活障害がみられていなくても虚弱となっている状態であるが,一般的にフレイルや要介護状態の高齢患者では,疾患や症状が多いことで治療薬を多数服用する必要性が生じる。ポリファーマシーとは,多剤服用に加えて服薬アドヒアランスの低下や薬物有害事象の増加リスクが増大している状態を指し,疾患の包括的な治療のみならずいかにしてポリファーマシーを避けるかが高齢者医療における大きな課題となっている。
一方,心房細動は高齢者に多く,抗凝固療法は脳塞栓症予防のために欠かせない。薬剤の必要性を考慮に入れると,高齢心房細動患者においてポリファーマシーと積極的な薬物療法のどちらを優先させるかは大きな問題である。
本稿では,ポリファーマシーと高齢者の抗凝固療法について解説する。