従来,急性期における抗凝固療法としてヘパリンを含めた静注抗凝固薬が多く用いられてきたが,心原性脳塞栓症予防に関しては虚血性イベント減少の可能性があるものの明らかに出血性イベントが増加することから,そのエビデンスの裏づけは乏しい1)。一方で,非弁膜症性心房細動(NVAF)に伴う脳梗塞の慢性期再発予防における直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の意義は,標準的な抗血栓療法として確立している。また,DOACは投与後速やかな抗凝固作用の発現が期待できるため,経口抗凝固薬の作用出現まで静注薬でブリッジする必要性は少ない。しかし,過去に行われたDOACに関する無作為化比較試験では脳梗塞急性期症例は除外されており,急性期におけるDOACの適切な開始時期に関しては議論が続いている。NVAFを伴う脳梗塞/一過性脳虚血発作(TIA)急性期において,早期に抗凝固療法を開始すれば虚血性イベントが減少すると考えられるが,一方で出血リスクが増加するとも予想され,これらの利益と不利益を考慮するとどのタイミングでDOACを開始するのが適切かは非常に難しい問題である。欧州から心房細動を伴う脳梗塞/TIA急性期における適切なDOAC開始時期として1-3-6-12日ルールが提唱されていたが2),その根拠となるデータは乏しく,欧州で行われた観察研究では3~14日の間で開始という幅の広い結果が示されたのみであった3)。
Current Review
【脳卒中領域】心房細動を伴う脳梗塞発症後急性期にDOACを開始するための1-2-3-4日ルール
掲載誌
Cardio-Coagulation
Vol.9 No.2 46-48,
2022
著者名
板橋 亮
記事体裁
抄録
/
連載
疾患領域
循環器
診療科目
循環器内科
媒体
Cardio-Coagulation
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。