ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種による血小板減少症を伴う血栓症(TTS)は,ヘパリン類とワクチンで誘因が異なるものの,抗血小板第4因子(PF4)抗体が血小板や単球を活性化し,トロンビン過剰産生,血栓塞栓症,消費性血小板減少をきたす病態で,抗PF4抗体関連血小板活性化疾患とも捉えることができる。TTSはCOVID-19制圧の切り札として開発されたワクチン,なかでもアデノウイルスベクターワクチン(ChAdOx1 nCov-19,Ad26.COV2.S)の副反応として2021年以降に報告された新しい疾患概念であり,その疫学や病態,治療法についてはいまだ不明な点が多い。これまでの研究から,TTSは特殊型HITである自己免疫性HITと病態類似性が高いと考えられており,治療に関しても自己免疫性HITの治療方針が外挿されている。HITの病態を理解することはTTSの適切な診断,治療に寄与する可能性がある。