不整脈薬物治療のガイドラインとしては11年ぶりに全面改訂となった『2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン』では,直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の登場により大きく変化した心房細動の抗凝固療法を中心に改訂が行われた。カテーテルアブレーションの登場により心房細動の病態生理が明らかとなり,その発生にはトリガーである肺静脈からの心房期外収縮だけでなく,心房筋の構造的・電気的リモデリングが深く関与する。このため,心房細動の治療にはリモデリングの原因となる高血圧・糖尿病・肥満・睡眠呼吸障害などの併存疾患の包括的管理・治療が重要となる。心房細動患者の約40%が無症候であり,潜在性心房細動患者の検出が心原性脳塞栓症の予防において重要であり,心房細動検出に検脈や長期間心電図モニターが推奨される。心房細動の抗凝固療法の改訂ポイントとしては,塞栓症リスク評価にCHADS2スコアが引き続き踏襲され,すべてのDOACがCHADS2スコア1点以上で推奨,ワルファリンは考慮可となった。また,その他のリスク因子として新たに持続性・永続性心房細動,腎機能障害,低体重,左房拡大の4つが加わった。さらに,非弁膜症性心房細動患者にワルファリンを使用する場合には,年齢によらず管理目標INRが1.6~2.6に設定された。