プロテインC(protein C:PC),プロテインS(protein S:PS),トロンボモジュリン(thrombomodulin:TM)は,いずれも血液凝固反応を制御して血液の流動性を維持する“プロテインC凝固制御系”の重要な因子である。血漿中の蛋白質であるPCとPSはアンチトロンビン(antithrombin:AT)とともにその先天性因子欠乏症が特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る。)(指定難病327)に認定されており,先天性血栓性素因の診断に重要なバイオマーカーである。他方,TMは血管内皮細胞上に存在する細胞膜蛋白質であり,血中には炎症病態時の内皮細胞傷害によって遊離された可溶性TMとして存在する。したがって,血中の可溶性TMは主に全身の血管内皮障害を診断するバイオマーカーとして有用である。
本稿では,PC,PS,TMの生理的役割とその病態時におけるバイオマーカーの測定意義,各マーカーの測定値を解釈するうえでの注意点などについて述べる。