RSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)は1956年にMorrisらがチンパンジーの鼻かぜ流行例から初めて分離し,Chimpanzee Coryza Agentと報告した.翌1957年に小児科医のChanockらがクループの患児から初めて分離し,培養細胞に特徴的な合胞体(syncytium)を形成するため,Respiratory Syncytial Virusと命名された(図1).かつてはヒトメタニューモウイルスとともにパラミクソウイルス科ニューモウイルス亜科に分類されていたが,2015年の国際ウイルス分類委員会での変更により,正式名称はニューモウイルス科オルトニューモウイルス属,ヒトオルトニューモウイルス(Human orthopneumovirus)である.RSVはゲノム全長約15.2kbのエンベロープをもつマイナス1本鎖のRNAウイルスであり,遺伝子は3'末端からNS1-NS2-N-P-M-SH-G-F-M2-Lの順に並び,10の遺伝子が11の蛋白をコードしている.