1960年代,米国でホルマリン不活化RSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)ワクチンの乳児を対象とした臨床試験が実施されたが,ワクチン接種によりRSV初感染時に症状増悪がみられ失敗に終わった1).現在に至るまで有効な治療薬,予防薬はなく,RSV 感染症はWHO も含め全世界が克服すべき感染症のひとつとされてきた2).RSVに対して高い中和抗体価をもつ母から生まれた児はRSV感染症の重症化から免れる3)ことが,今日のハイリスク児における抗RSVモノクローナル抗体投与による重症化抑制薬,そして妊婦ワクチンの開発につながっている.これまで,RSVに対するワクチンは存在せず,受動免疫として抗RSVヒト化モノクローナル抗体のパリビズマブのみが,1998年に米国で認可されて以来,本感染症のハイリスク児のみに重症化抑制を目的に60カ国以上の国々で使用されてきた4)