近年,国内では,梅雨や台風の季節以外にも,都市部に突如として発生するゲリラ豪雨や線状降水帯に伴う長時間の大雨による水害が頻発している.床上・床下浸水の被害となると,下水や汚泥との接触の機会が増えるために,接触感染や経口感染のリスクが高まることは想像に難くない.また水害にかかわらず,地震や津波などの大規模自然災害では,多くの人が集まる避難所が開設される.そこでの不自由な生活が長引けば,経気道感染,水系感染,糞口感染,食中毒などのリスクも高まってくるであろう.さらに復旧に関連して,作業中に衛生害虫や動物(ペットを含む)からの感染,ボランティアが持ち込む感染なども問題となってくる.
東日本大震災(2011年)や熊本地震(2016年)などの避難所での感染症対策の教訓から,2017年に厚生労働省は,その防災業務計画において「避難所等における衛生環境を維持するため,必要に応じ,日本環境感染学会等と連携し,被災都道府県・市町村以外の都道府県及び市町村に対して,感染対策チーム(ICT)の派遣を迅速に要請すること」,「被災都道府県・市町村は,保健医療に係る災害応急対策を実施している本部等に,感染症に関する十分な知見を有する医師等を常駐させるよう努めること」を追記した1).
そこで日本環境感染学会(以下,JSIPC)は,災害時感染制御検討委員会を設けて,「大規模自然災害の被災地における感染制御マニュアル2021」,「災害時感染制御支援チーム(DICT)の活動要綱」を整備し,DICT要員の研修を計画するなど,全国組織化を図っている2).
本稿では,災害後に発生する感染症のリスク,国内で問題となる感染症,DICTの構成・役割・活動などについて概説する.
東日本大震災(2011年)や熊本地震(2016年)などの避難所での感染症対策の教訓から,2017年に厚生労働省は,その防災業務計画において「避難所等における衛生環境を維持するため,必要に応じ,日本環境感染学会等と連携し,被災都道府県・市町村以外の都道府県及び市町村に対して,感染対策チーム(ICT)の派遣を迅速に要請すること」,「被災都道府県・市町村は,保健医療に係る災害応急対策を実施している本部等に,感染症に関する十分な知見を有する医師等を常駐させるよう努めること」を追記した1).
そこで日本環境感染学会(以下,JSIPC)は,災害時感染制御検討委員会を設けて,「大規模自然災害の被災地における感染制御マニュアル2021」,「災害時感染制御支援チーム(DICT)の活動要綱」を整備し,DICT要員の研修を計画するなど,全国組織化を図っている2).
本稿では,災害後に発生する感染症のリスク,国内で問題となる感染症,DICTの構成・役割・活動などについて概説する.