Clostridioides difficile (C. difficile) はグラム陽性の芽胞形成性嫌気性菌で,抗菌薬関連腸炎の原因として知られる.本菌は,1935年に健常新生児の糞便から分離され,その後1978年に抗菌薬関連の偽膜性大腸炎(Pseudomembranous colitis)の原因菌として報告された.2002年以降は欧米を中心に病原性の強い菌株(BI/NAP1/027株)が流行し,米国疾病管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)において緊急に対応すべき微生物と位置づけられている.健常人における保菌率は2~15%程度とされるが,日本人における本菌の腸管内保有は7.6%程度に認められたとの報告がある1).入院患者では保菌率は上昇し,医療機関におけるアウトブレイクなどの状況では50%に及ぶ場合もある.このような背景を受けて,わが国でも2018年10月に日本感染症学会・日本化学療法学会より「Clostridioides (Clostridium) difficile 感染症診療ガイドライン」が発刊されている2).なお,本菌は,従来はClostridium difficileと命名されていたが,細菌の表現型,化学分類学的・系統学的検討の結果,Clostridioides属が新設され,2016年にClostridioides difficileに名称変更されている.本稿では,C. difficile感染症(CDI)の病態,診断,治療について注目の話題を含め概説する.