「はじめに」膠原病は,自己免疫的な機序を背景に,皮膚,関節,筋肉,血管などに炎症が起こる,クレンペラーが提唱した疾患群の総称である.全身性エリテマトーデス(SLE),関節リウマチ,強皮症,多発性筋炎・皮膚筋炎,シェーグレン症候群などが該当する.全身性の慢性疾患を抱えるという心理的なストレス要因は大きく,膠原病のなかには症状として精神症状をきたすものもあり,膠原病の治療で用いられるステロイドによる精神症状,ステロイドの易感染性による脳炎なども考慮する必要があるため,しばしば精神科の関与が求められる.相互に関係する多くの因子を検討するとともに,正しく診断し,治療計画を立てる必要がある点では,リエゾン精神医学が関与する疾患のなかでも,対応が難しい疾患のひとつである(図1).
「全身性エリテマトーデスの精神症状」膠原病のなかで精神科が関与する可能性が特に高い疾患はSLEである(表1)1).腎臓や皮膚の症状が目立つが,中枢神経症状として,精神症状,意識障害,てんかん発作などを起こすことが知られている,精神症状としては,うつ,躁,幻覚や妄想,カタトニア,せん妄,認知機能低下などが起こりうる2).これらの症状の発現は,中枢神経への自己免疫的侵襲による脳炎,または多発小梗塞と関連していることが多い.