はじめに  超高齢化社会の到来とともに脳卒中患者,特に脳梗塞患者が増加の一途をたどっている.脳梗塞は寝たきり・介護の最大要因であり,その発症予防が喫緊の課題である.近年,性差医療の研究が広く行われるようになり,脳卒中やその3分の2を占める脳梗塞もまた,性差のある疾患であることが明らかとなっている.性差には,遺伝学やホルモンに基づく生物学的な差と,ライフスタイルや環境など社会学的な差があるが,女性の社会進出に伴い,ライフスタイルの差異は小さくなっていると思われる.一方で,高血圧症・糖尿病・脂質異常症など脳梗塞の危険因子そのものにも生物学的な性差があることから,性差に留意した生活習慣病・脳卒中診療は重要である.本稿では,われわれが行っている脳卒中データベース研究の知見を交えながら,「女性」における脳梗塞の病態やリスクの特徴について述べる.